Windows 10初のアップグレードとなる「Threshold 2」の提供が始まった。2016年は本格的に企業のクライアントPCやモバイルでWindows 10が採用されるようになるだろう。しかし、企業でWindows 10が本格導入されていくためには、既存のデスクトップ アプリケーション(Win32アプリケーション)から「Universal Windows Platform(UWP)」ベースのアプリへ移行していく必要がある。

 既存のWin32アプリケーションは、PCデスクトップでの動作を前提しているため、携帯電話などのWindows 10 Mobileでは動作しなかったり、様々な画面サイズが存在するタブレット デバイスなどに対応したりするには手間がかかる。

 今後のWindows OSとしては、Windows 10がベースになる。Win32ベースのデスクトップ アプリケーションがすぐにはなくならないだろうが、企業向けのアプリはUWPベースへ徐々にシフトしていく。16ビットのWin16ベースのアプリケーションが徐々に消えていったのと同じように、これからの10年を考えればWin32ベースのデスクトップ アプリケーションも次第に無くなるだろう。

 企業でUWPアプリが普及していくには、企業内だけでアプリを公開する「プライベート ストア」が必要だ。デスクトップ アプリケーションのように、ユーザーがある程度自由にクライアントPCへアプリケーションをインストールできてしまうと、ライセンスの管理が難しくなり、違法なアプリケーションがインストールされかねないなど、ITに関するガバナンスをキチンと効かせることができない。

 また自社向けに開発したUWPアプリを、一般ユーザーがアクセスできるMicrosoftのWindows Storeにアップしてしまうのも、ビジネス面では大きな問題になる。そこで登場したのが、社内利用できるプライベート ストアの「Windows Store for Business(WSB)」だ。

●Windows Store for Businessとは?

 Windows 8/8.1ではパブリックなWindows Storeか、System Center Configuration Manager(SCCM)を使って、社内のサーバ上にカンパニー ポータルを構築するか、Microsoftのクラウドサービス「Intune」によってアプリを配布するかしか方法がなかった。一方、Windows 10ではMicrosoftのクラウドサービスとして、企業向けのプライベート ストアを構築できるWSBが用意される。

 WSBは以前から企業向けのサービスとして提供されると、Microsoftからアナウンスされていたが、Threshold 2のリリースに合わせるように、ようやくサービスがスタートする。当初は日本を含む20カ国で提供される。

 WSBはMicrosoftのクラウド上にプライベート ストアを用意することから、ユーザーは「Azure AD」などの企業アカウントを使って簡単にアクセスできる。クライアントデバイスをグループポリシーなどで管理している場合は、Windows Storeではなく、WSBのStoreアプリでアクセスできる。また、社内で開発したUWPアプリだけでなく、Windows Storeで公開されているアプリを企業ライセンスとして購入可能なので、社内向けの基本的なアプリをWSB上で用意できる。

 もちろん企業ライセンスとして購入する場合は、ライセンス数などを限定できるため、必要なユーザーにだけ特定のアプリを届けられる。Azure ADを利用するためので、部署の異動や退職などで状況が変わったアカウントに対しては、すぐにアプリを使用不可にもできる。アプリのアップデートなどはWSBで自動化できる。

 将来的には、Win32アプリケーション(デスクトップ アプリケーション)をUWP上で動作させる「Project Centennial」がリリースされるだろう。既存のデスクトップ アプリケーションをUWP化して、WSB経由で配布できるようになる。「Project Westmeinster」ではWebサイトをストアアプリ化できる。この他に、iOSのアプリをUWP化する「Project Islandwood」、AndroidアプリをUWP化する「Project Astoria」などがある。こういった開発ツールがそろえば、ほとんどアプリケーションをWSB経由で配布できるようになるだろう。

 また、WSBが認証基盤として利用するAzure ADは、Office 365などでも利用されているため、Office 365を採用する企業にとっても採用しやすいと思われる。Azure ADは、Microsoft以外のクラウドサービス(Salesforce、Google Apps、Boxなど)の認証基盤として利用できる。WSB上にSalesforceへアクセスするためのアプリ(Webサイトをストアアプリ化)を用意しておけば、従業員が新しいPCや携帯電話を購入しても、プライベート ストアにアクセスして必要なアプリを自分でインストール(セルフポータル)するだけで、新しいデバイスでも簡単に業務環境を準備できるだろう。

 2015年現在で企業のWindows 10クライアント導入はまだ本格化していないため、WSBのメリットを感じられないかもしれない。しかし、2016年にWindows 10の導入は本格的になっていく。その時にこそWSBの必要性を感じることだろう。

日本マイクロソフト株式会社は11月11日、2015年11月のセキュリティ情報を公開した。公開されたセキュリティ情報は12件で、このうち最大深刻度「緊急」が4件、「重要」が8件となっている。修正された脆弱性は、CVEベースで53件(重複4件)。今回発表された内容は以下の通り(深刻度順)。

「緊急」
MS15-112:Internet Explorer 用の累積的なセキュリティ更新プログラム(3104517)要再起動
MS15-113:Microsoft Edge 用の累積的なセキュリティ更新プログラム(3104519)要再起動
MS15-114:リモートでのコード実行に対処する Windows Journal 用のセキュリティ更新プログラム(3100213)再起動が必要な場合あり
MS15-115:リモートでのコード実行に対処する Microsoft Windows 用のセキュリティ更新プログラム(3105864)要再起動

「重要」
MS15-116:リモートでのコード実行に対処する Microsoft Office 用のセキュリティ更新プログラム(3104540)再起動が必要な場合あり
MS15-117:特権の昇格に対処する NDIS 用のセキュリティ更新プログラム(3101722)要再起動
MS15-118:特権の昇格に対処する .NET Framework 用のセキュリティ更新プログラム(3104507)再起動不要
MS15-119:特権の昇格に対処する Winsock 用のセキュリティ更新プログラム(3104521)要再起動
MS15-120:サービス拒否に対処する IPSec 用のセキュリティ更新プログラム(3102939)再起動が必要な場合あり
MS15-121:なりすましに対処する Schannel 用のセキュリティ更新プログラム(3081320)要再起動
MS15-122:セキュリティ機能のバイパスに対処する Kerberos 用のセキュリティ更新プログラム(3105256)要再起動
MS15-123:情報漏えいに対処する Skype for Business および Microsoft Lync 用のセキュリティ更新プログラム(3105872)再起動が必要な場合あり

このうち、MS15-115(CVE-2015-6109)、MS15-116(CVE-2015-2503)、MS15-120(CVE-2015-6111)、MS15-121(CVE-2015-6112)は脆弱性情報が一般に公開されていた。

 昨年から8インチ前後の液晶を搭載した、小型Windowsタブレットの低価格化が進んでいる。低価格化にはMicrosoftが「Windows 8.1 with Bing」の提供を開始したことにより、Windows 8.1を実質無料で搭載できるようになったことが一因となっている。現在では大手メーカーだけでなく直販メーカーなどからも多数販売されており、価格は2~3万円台が主流となっているようだ。
 Windowsタブレットが2~3万円で手に入るのなら買ってみたいと思っている人は多いと思う。反面、どの程度使えるのだろうかと疑問に感じ、二の足を踏んでいる人もいるのではないだろうか? また、現在発売されているWindowsタブレットのOSの多くは8.1なので、Windows 10にアップグレードしても大丈夫なのだろうか?と不安に思っている人もいるだろう。そこで今回、実際にWindowsタブレットを購入し、OSをWindows 10へアップグレードして色々試してみることにした。

■どの商品を購入するか?
 安価なWindowsタブレットは各社から発売されているが、CPUは大半が「Atom Z3735F 1.33GHz」を搭載しており、違いはメモリやストレージの大きさ、外部インターフェイスなどとなっている。どの商品を購入するか悩んでいたとき、気になる商品が目に留まった。iiyamaの『9P1150T-AT-FEM [Windows 8.1 with Bing搭載]』(以下『9P1150T-AT-FEM』とする)だ。液晶サイズは8.9インチWXGA(1280×800)メモリは2GB、ストレージは32GBとスペックは標準的だが、この商品には専用のキーボードカバーが付属して価格はなんと2万4400円!
 この値段でノートPC感覚でも使えるのであればかなり面白いのではないか?と感じ、さっそく購入することにした。なお、この商品は「パソコン工房」での専売となっているようだ。また、Officeが必要という方は、『9P1150T-AT-FEM [Windows 8.1 with Bing]+[Microsoft Office Home and Business 2013]』か、マウスコンピューターから販売されている同型商品『WN891』に「Microsoft Office Home & Business 2013」が搭載されているので、こちら購入するのが良いだろう。どちらも2万9800円と非常にお買い得である。

■『9P1150T-AT-FEM』はどんな商品か?
『9P1150T-AT-FEM』の本体サイズは、幅231×奥行152×高さ10.9mm、重量は481gと、8.9インチ液晶を搭載している分、標準より少し大きめになっている。表面は滑り止め加工が施されており、安っぽさは感じられない。また、液晶画面には最初から保護フィルムが張られており、細かいところにまで気を配られていることに感心した。知らない人が見たら2万円台の商品だとは思わないだろう。
 外部インターフェイスはUSB2.0×1、充電用microUSB×1、micro HDMI×1、ヘッドフォン端子×1、microSDカードリーダー(SDXC、SDHC含む)が側面にまとまって並んでいる。USB端子が充電用と共用になっている製品が多いなか、充電専用のmicroUSB端子が付いているので、充電しながら他のUSB機器を使用できるのは地味に嬉しいところだ。
 音質はとりあえず音が出るという程度のもので、お世辞にも良いとは言えないが、外出先などで使用する際は音を出さないので個人的にはあまり気にならない。内蔵カメラは前面・背面ともに192万画素。少々物足りない性能だが、タブレットで写真撮影をする機会はなかなかないと思うので、ビデオチャット等に使うのであればこれで十分かと。
 キーボードはノートパソコンのキーボードほどではないが打鍵感を感じられる作りになっており、このサイズのキーボードとしては充分かと。上下にはゴムが取り付けられており、タブレットの画面とキーボードが接触しないようになっている。タッチパッドも搭載されており、こちらでのカーソル操作も可能。ただし、このタッチパッドは挙動が特殊で、タッチパッド全体のどこかを軽くタップまたは左半分を押し込むと左クリック、右半分を押し込むと右クリックになっているようだ。
 タブレットとは専用端子によるマグネット接続でしっかりと固定されており、タブレット側を持って持ち上げても外れることはない。タブレットにキーボードをセットした状態は、まさに小型ノートブックといった感じだ。また、カバーを閉じると本体がスリープ状態になる点にもこだわりを感じられる。

■さっそくWindows 10に…
 本来ならここで使用感をレポートするのが通常の流れだが、今回はまずOSをWindows 10にアップグレードしてから、使用感のレポートを行うことにする。なぜアップグレードを先に行うかというと、この価格帯のWindowsタブレットはスペックに大きな差はなく、おおむね「メールやネット、文書作成などの作業は問題なく行えるが、3Dグラフィックのゲームなど、高スペックを要求されることには向かない」という、似たような評価になるからである。
 そこをあまり掘り下げても仕方がないので、今回はWindows 10にアップグレードした後、Windows 8.1の頃と同じように動作するか? 不具合などは発生するのか? などといった点をレポートする。(※Windows 10へのアップグレードはメーカー保障対象外になる場合もあります。)
 アップグレード自体はとても簡単で、Windows Updateから案内される手順に従っていけば戸惑うことはないだろう。ただし1時間以上かかるので、時間に余裕があるときに行ったほうが良い。
 アップグレード作業は何一つトラブルなく完了。アップグレード前に設定したアカウントやネットワーク設定などは、アップグレード前のものがそのまま引き継がれていた。今回購入したタブレットが比較的オーソドックスな構成だったのもあるのだろうが、ここまでスムーズなWindows OSのアップグレードは初めてだった。

■アップグレード後の使用感は?
 Windows 10の新機能などは@DIMEの記事を参考にしていただくとして、ここからはWindows 10にアップグレードした『9P1150T-AT-FEM』を実際に使用してみた感想や気になった点などをレポートする。
 まずはハードウェア面。付属のキーボードカバーはアップグレード以前と同様に使用可能。閉じることでスリープ状態になる点も問題なし。カメラもイン側アウト側両方とも正常に動作した。ほかにも色々と調べたが、アップグレードによる不具合のようなものは現状では発生していなかった。ただし、アップグレード後はストレージの空き容量が8.6GBにまで減少してしまった。
 これは、Windows 10にアップグレードした後は1ヶ月間、元のWindowsに戻せるようにバックアップが保存されているためだ。手動で削除することも可能だが、あまりパソコンに詳しくない場合、保険として残しておいたほうが良いだろう。また、ストレージはもともと32GBしかないので、MicroSDカードを追加してストレージを増量するのが現実的だ。自分の場合は64GBのmicroSDカードを追加したので容量の心配はしばらくないだろう。
 次にソフトウェア面。メールやインターネット、文書作成などもアップグレード前と変わりなく使用できた。このタブレットはキーボードが付属しているおかげで文書作成も快適で、さらにBluetoothマウスを接続すれば、コンパクトなモバイル仕事環境の完成だ。YouTubeでの動画再生も、iPhoneとテザリングして再生してみたが、こちらも快適でパワー不足を感じることはなかった。
 ではゲーム機としてははどうだろうか? Windowsタブレットの使用者にはDMM.comの「艦隊コレクション~艦これ~」に代表される、iOSやAndroidでは動作しないブラウザゲームのプレイヤーが多いと聞くので、まずは「艦これ」をチェック。Windows 10に搭載された新しいブラウザー「Microsoft Edge」で「艦これ」をプレイ。タッチパネル操作で快適にプレイできた。
 次は「Minecraft: Windows 10 Edition Beta」を起動。こちらも処理落ちなどもなく遊べそうだ。無理を承知でオンライン3Dゲームの動作確認も。「ドラゴンクエストX」のベンチマークを走らせてみたところ、厳しい評価になったが実際には思いのほかちゃんと動いていたという印象だ。
 最後は、もっと無理して「ファイナルファンタジーXIV 蒼天のイシュガルド ベンチマーク」でテスト。一応動作するもののコマ送り状態だった。動作するだけでもすごいのだが…。テストの結果、ブラウザゲームやあまりスペックを要求されないゲームなら、充分プレイ可能という結果になった。さすがに高スペックを要求するゲームは無理なので、それを主目的とする人はゲームプレイに特化したPCを探したほうが良いだろう。

■結論
 今回購入した『9P1150T-AT-FEM』はスペックこそ標準的だが、値段を感じさせない作りで満足感が高く、さらにキーボードカバーが付属しているおかげで、タブレットとしてだけでなくノートPC感覚でも使用することができる優秀な商品だった。メインのPCとして使用するには力不足だが、外出時にちょっとした文書作成などをしたい、気軽に持ち運べるサプ機が欲しいという人にオススメしたい。
 また、今回レビューした『9P1150T-AT-FEM』はWindows 10への移行は問題なかったので、いちはやくWindows 10を体験してみたいという方にも向いているのではないだろうか?(ただし自己責任でお願いします)
 Windowsタブレットが気になっているが手を出せずにいるという人は、いちど店頭で手に取ってみることをオススメする。安価なモデルでも想像以上にしっかりと使えることに驚くだろう。iOSやAndroidと比べると提供されているアプリは少ないが、Windowsの場合は大量のデスクトップソフトウェアが存在するのでソフト不足を感じる事はほとんどない。また、昔から慣れ親しんでいるソフトがそのまま使えるものが多いのも強みだ。

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